判決文

第35回模擬裁判 判決

    
平成22年(わ)第3159号

判    決

  本 籍  山寺県花笠市中野三丁目10番7号
  住 所  山寺県花笠市都南八丁目5番古川アパート103号
  職 業  無職

市 川 奈 菜
昭和60年8月11日生

上記の者に対する傷害、遺棄等致死事件について、
当裁判所は、検察官蒲生直之、前田紅葉出席の上審理し、次のとおり判決する。


主 文

被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。


理 由

( 犯行に至る経緯 )
  被告人は平成14年、高校在学時から当時大学生である市川拓と交際するようになり、同15年に被告人が妊娠したことにより、被告人の夫である市川拓は大学を中退し、市川奈菜と市川拓は婚姻するに至った。
  被告人は市川拓との間に、長男市川翔太(同15年1月2日生)及び次男市川龍太(同18年1月5日生)をもうけ、同児らを養育していたものであるが、市川拓は育児に関わろうとせず、また、賭けごとや夜遊びにふけり、同児らの育児は被告人に依存するようになった。

( 罪となるべき事実 )
 第一  被告人は、被告人の長男と次男に対し、平成21年10月7日に長男を突き飛ばし、医師による診察治療を受けさせるなどの保護を怠り手首に全治2週間の怪我を負わせ、
 第二  また被告人は、長男と次男に対し食事を抜いたり必要以上に量を少なくしたりと満足な食事を与えなかった結果、平成22年1月9日搬送先の病院で被告人の次男を衰弱死させたものである。

( 証拠の標目 ) 省略

( 法令の適用 )
  1罰条
   突き飛ばしたことよる怪我の点   刑法204条
   栄養失調によって衰弱死させた点 刑法219条
  2刑種の選択 判示第1の罪 懲役刑
  3併合罪加重               刑法45条前段、47条本文、
                          刑法10条(重い判示第2の罪に加重)
  4未決勾留日数の算入         刑法21条
  5訴訟費用の負担            刑事訴訟法181条1項但書

( 量刑の理由 )

1.本件は、被告人が平成19年の秋ごろから幼い長男、次男に対し日常的に暴力行為を繰り返し、平成21年10月7日長男を足で突き飛ばし、全治2週間の怪我を負わせ、医師による診察治療を受けさせるなどの親としての責任を怠り、さらに同時期から被告人は長男と次男に対し食事を抜いたり必要以上に量を少なくしたりと満足な食事を与えなかった結果、平成22年1月9日搬送先の病院で次男を衰弱死させ、長男も極度の栄養失調の状態に至らしめた、傷害及び保護責任者遺棄等致死の事案である。

2.まず、本件犯行態様は上記の通り、将来ある幼い自分の子どもに対し日常的に暴力行為を行い、また食事の量を必要以上に少なくするなど満足な食事を与えなかった結果、日被告人の次男を搬送先の病院で衰弱死させたもので、極めて冷酷な手段方法による傷害、し保護責任者遺棄等致死事案であると断ぜざるをえない。さらに、怪我をした子どもに対する処置もすることなく、また病院で診察治療を受けさせることもなく、食事を満足に与えないなどの行為は親としての責任が大きく欠けていると断ぜざるをえない。幼く尊い命を奪われた子どもの恐怖感や絶望感、そしてこれから未来ある命を落とした悲惨さは筆舌に尽くしがたいものといえる。かわいい弟の命を奪われた長男の感情は複雑であり、同人に与えた精神的・物質的苦痛も生涯拭いきれないものである。してみれば、本件による被害者及びその夫の問題が、周囲の人間に与えた影響は、深刻、かつ重大である。また、自分の子どもに日常的に暴力をふるい、怪我をさせ、衰弱死させた本件犯行が社会に与えた衝撃は大きいといわねばならない。

3.しかしながら、被告人が本件犯行に至った経緯として、被告人のこれまでの生活環境や被告人の育ってきた背景を考えると、躾のために食事を与えなかったなど本件で被告人の行った行為全てが残虐非道なものであると断ずることもできず、被告人に酌むべき事情も認められる。また被告人の夫の証言からも、夫は育児など家事に非協力的であり、また賭けごとや遊興により家庭に満足なお金を入れることもなく、被告人の生活環境は経済的に貧しく、その責任が全て被告人にあるとは言いきれなく、家庭に非協力的な夫に対する日々の鬱積した不満も加わり被告人の生活に大きなストレスを抱えていたことを無視することはできず、被告人に酌むべき情状も認められる。

4.本件の犯行態様は、上記のような動機からすると被告人に本件犯行の全責任があるとは言えず、被告人に対して酌むべき情状も考えられる。しかしその一方で、被告人は周りから差しのべられた助成の手を拒み続け、一人で育児をしようと考えていたとはいえ、本件犯行に至った経緯としては、周囲の助成の手を拒んだことは身勝手なことと言わざるをえなく、本件犯行に至り近隣の人々に与えた衝撃はあまりにも大きいものと考えなければならない。以上のことを踏まえると、被告人は、幼少の生活環境で身に付いた養育の手段とはいえ、被告人の両親と被告人の世代とではその生活感情において隔絶があったこと、本件犯行が残虐冷酷なものであったとはいえ、殺意はなく衰弱して動かなくなった次男を自ら病院に通報し連れて行くといった行為をとり次男を救おうとしたことが認められ、また前科前歴がないこと、公判における被告人の供述の態様は罪を償い、被告人自身の子どもに対し真に反省しており被告人に対し、更生の余地があるとうかがわれること、被告人の残された長男のことをがんがみると、被告人に情状酌量の余地があると認められる。ただ、近年の社会状況を考え、本件犯行のような事件があることは決して許されることではなく、本件犯行の罪質、動機、態様、結果、社会的影響等に照らすと、実刑3年の懲役に処するのが相当であると判断した。よって主文の通り判決する。


平成22年12月8日
花笠地方裁判所刑事第二部
裁判長裁判官  石原ふみゑ
     裁判官  太田シンジ
     裁判官  平塚藍

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