判決文

第36回模擬裁判 判決

    
平成22年(わ)第3159号

判    決

  本 籍  花笠県山寺市本町一丁目7−3
  住 所  花笠県山寺市本町一丁目7−3
  職 業  学生

山 中 壮 太
昭和62年5月21日生

上記の者に対する危険運転致死(予備的訴因 自動車運転過失致死、道路交通法違反)、道路交通法違反被告事件について、
当裁判所は、検察官香坂健太郎出席の上審理し、次のとおり判決する。


主 文

被告人を懲役8年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。


理 由

( 罪となるべき事実 )
 第一  被告人は、酒気を帯び、呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有した状態で、平成21年6月12日午後10時ころ、花笠県山寺市二丁目五番地市道2号道路にて、普通乗用自動車を運転し、
 第二  前記日時、場所において前記車両を運転し、花笠県山寺市白川町二丁目五番地二号先の居酒屋「一幸」前交差点を飯野方面から高久方面に向かい時速60キロメートルで進行中、交際相手東野千夏との携帯電話での通話に気をとられたことなどにより、同道路を横断してきた滝川裕(当時22歳)、今田忠義(当時22歳)を、自車前部に順次追突させて跳ね飛ばし、路上に転倒させるなどし、よって、滝川裕を全身打撲、肺損傷、肺塞栓により同日午後11時8分ころ、今田忠義を全身打撲、脳挫傷により同日午後11時45分ころいずれも、山寺市鹿島1丁目33番地14号山寺総合病院においてそれぞれ死亡するに至らせたものである。
 第三  被告人は、平成21年6月12日午後10時ころ、第一記載の道路において、同記載のとおり、普通乗用自動車を運転中に滝川らを死に至らしめる交通事故を起こしたのに、直ちに車両の運転を停止して、負傷者を救護する等必要な措置を講ぜず、かつ、その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった。
 第四  そして被告人は事故当時、交際相手の東野千夏と携帯電話を使用していた。

( 証拠の標目 ) 省略

( 法令の適用 )
  罰条
   第1
   道路交通法65条1項、道路交通法117条の2の2第1号、道路交通法施行令44条の3
   第2
   被害者ごとに、刑法211条2項本文
   第3
   救護義務違反の点
   道路交通法72条第1項前段、117条第2項
   報告義務違反の点
   道路交通法72条1項後段、119条1項10号
   第4
   道路交通法71条第5号の5   刑種の選択
   第1、第2ないし第3、第4につき懲役刑
  科刑上一罪の処理
   第2、第3につき、いずれも刑法54条1項前段、10条(各自動車運転過失致死は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により,1罪として犯情の最も重い自動車運転過失致死罪の刑で処断。なお,各自動車運転過失致死は,いずれも犯情が重く,その間に軽重の差はないから,刑法10条によって最も重いものを決することができない。よって,これを特定することなく,1罪として犯情の最も重い自動車運転過失致死罪の刑で処断するほかない。)
  併合罪の処理
   刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第3の罪の刑に加重)
  未決勾留日数の算入         刑法21条
  訴訟費用の負担            刑事訴訟法181条1項但書

( 量刑の理由 )

1.本件において、検察官は、被告人に危険運転致死罪が成立することを前提に懲役20年の求刑をしたが、当裁判所は、上記のとおり、同罪の成立を認めず、自動車運転過失致死罪及び道路交通違反(酒気帯び運転)の各事実(判示第1及び第2)を認定した。第3の道路交通法違反(救護義務違反及び報告義務違反。以下「ひき逃げ」という。)の事実と第4の道路交通法違反(携帯の電話使用)の事実とあわせて、認定した判示事実に所定の法律を適用した結果、処断刑の範囲は懲役15年となるので、以下、これを前提に量刑の理由を説明する。

2.被告人は、0.15ミリグラム以上のアルコールを保有する状態で、人通りの多い飲み屋街付近において、制限速度を30キロメートル超過した60キロメートルという高速度で自動車を運転中、携帯電話の使用は道路交通法に違反することを知りながら使用しその結果、同道路を横断中の滝川、今田を発見できず、自動車前部に追突させ跳ね飛ばし死亡させた。このような本件の被告人の態様は、前方を注視し進路の安全を確認しながら進行するという自動車運転者が守るべき最も基本的かつ重要な自動車運転上の注意義務を怠ったものであり、被告人の過失は重大である。次に酒気帯び運転の犯行についてみると、被告人は長時間にわたって、アルコールを身体に保有する状態であることを十分に自覚しながらも、自らの意識は正常であると過信し、交際中の東野千夏の家に行く目的で自動車の運転を開始し、酒気帯び運転に及んだものであって、なんら酌量の余地はない。酒気を帯びた状態であり、人通りの多い飲み屋街であったのにもかかわらず、時速60キロメートルという高速度で自動車を運転しており、交通法規を軽視し他の交通関与者の安全に対する配慮 を欠いた被告人の運転態度は厳しい非難を免れない。
 さらに、ひき逃げの犯行についてみると、被告人は「何かにあたったという感覚はあった、人がいるのに気づかなかった。怖くなって逃げた。」と証言しており、また「人かもしれない」とも証言している。このことから、被告人は酒気帯び運転の発覚を恐れて逃走を図ったもので、その動機は誠に身勝手かつ自己中心的であって酌量の余地は微塵もない。

3.そして、飲酒運転に起因する悲惨な交通事故が後を絶たないことは公知の事実であり、一般予防の見地からも、被告人にたいしては厳しい態度で臨む必要がある。本件事故によって死亡した滝川裕、今田忠義の残された各遺族の悲しみや喪失感は筆舌に尽くしがたく、現在も被告人に対して峻烈な処罰感情を抱いているのは当然である。これらのことに鑑みても、本件犯行が被害者の家族、周囲の人間に与えた影響は、深刻、かつ重大である。また、飲酒によるひき逃げという身勝手な行為による本件犯行が社会に与えた衝撃は大きいといわなければならない。
これらの事情に照らすと被告人の刑事責任は誠に重大である。

4.他方、被告人は、本件事故後一旦はその場から逃走したもののその後交際相手の東野に促されて自首していること、各遺族に謝罪の手紙を出すととともに,亡くなった2人の冥福を祈る生活を続けている上,これからは社会の一員として自覚をもった行動をとって生きていくことを誓うなど、被告人なりに真摯な反省の情を示していること、本件被害については、いずれ自動車保険による財産的損害の賠償が見こまれること、被告人は、本件事故についてマスコミで大きく報道され、内定が取り消され一定の社会的制裁を受けていること、いまだ22歳と若年であり、これまで前科はないことなど、被告人にとって酌むべき事情も認められる。

5.しかしながら、これら被告人のために酌むべき事情を十分考慮に入れても、なお被告人には本件の重大性、深刻性を改めて認識させ、徹底した矯正教育を施すことは必要であると考え、被告人には主文の通り懲役8年の実刑を持って臨むのが相当であると判断した。


平成21年11月21日
山寺地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官  吉川和史
     裁判官  近野匡治
     裁判官  土生亮介

INDEX

mailto:admin @ mogisai.net