我輩は椅子である


名前はまだない。というよりこの間完成したばかりである。名前があるわけがない。
我輩を作ってくれたのは大道具という人たちらしい。演劇の練習をしている傍らでガムテープとカッターを手に作ってくれたのである。
生まれはヤマザワ作りはダンボール。見た目が脆そうだとか言う物ではない。所詮一代限りの命。派手に燃え尽きる所存だ。
そもそも椅子と言った所で、正確には椅子の背にはめるパーツといった方が正確だ。まあ、一応椅子と思っていただければ、これ幸い、椅子冥利に尽きるというものだ。
昨日今日と黒い布を巻いてもらい、漸く様になったという感だ。仲間のうち2脚ほどは布が足りなくて今日巻かれていた。新しく買ってきていた布は厚手で、我輩に巻かれている布よりやや上等だ。皺も無く、見た目に綺麗のようだ。悔しいわけではない。実は裏を見ると星の柄があったりしてみっともないと思っている。
本当である。

今日は演劇の通し稽古だったようだ。始めて人に座られた。正直、座られると視界が狭くなって迷惑この上ない。しかし、人に座ってもらって初めて椅子という存在であろうから、我輩は我慢しよう。
練習が終わった後、偉そうな人が何か喋っていた。

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「緊張感に欠けている。明日の総リハは本番だと思ってやってください」とか「声が小さかったり聞き取りづらかったりするからもっと大きく」とか「台詞を忘れたからといって笑わないように」などといっていたように思う。我輩が見ている限りでは、その指摘は実に的を得ていたように思う。演技を意識しすぎているのかもしれないし、台詞に自信が無いのかもしれない。しかし、公演日は否応無く迫ってくる故、やれることをやるという、それこそ当たり前過ぎる事をやるしかないだろう。健闘を祈って止まない今日この頃である。

それが終わったあと、大道具の人が我輩を見て何かああでもないこうでもないと言っていた。どうやら我輩が五月蝿いらしい。無論、我輩には口はないのでお喋りが五月蝿いということではない。同輩の椅子達との間が狭すぎて、座っている人間がなかなか出られずに、結果的にガタゴトと音を立ててしまうのである。なんらかの対処法を求める必要があるだろう。しばし話し合った後、どうやら幾つかの対処法が決まったようだ。こういうとき、我輩の脚が動けば便利なのだろうが、そればかりは、我輩にはどうしようもないことなのである。

その話し合いが終わる頃には広い1集からも人はかなり減っていった。今日は我輩、初陣にて沢山人を支えてかなり疲れた。故にそろそろ睡魔に襲われている。仕方ないので大人しく寝ようと思う。明日は総リハのようであるからして、座る人をしっかりと支えるためにも、ちゃんとねて英気を養うべきであろう。

公演まであと九日
それでは諸君、またの機会までさらば、である。


(次の更新は……タカハシリョウ(予定は未定))


― posted by ハタオリ at 22:40 | Comment [ 1 ] | Trackback [ 0 ]

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この記事に対するコメント・トラックバック [1件]

1. 道化 — November 17, 2004 @01:59:36

書いてる時は調子よかったんですが、書き終わってみればナニコレウワー。
ま、見なかった事に(ぁ

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